サッカーチームは何にお金を使っているの?出費はなに?(事業構造:費用編)

前回に引き続き、サッカーチームの儲けの構造を解説します。
前回は、一般企業でいう売上に当たる営業収益を解説しましたので、今回は費用を解説します。
サッカーチームがどんな費用を使っているか理解することで、サッカーチームの損益構造の全体が理解できます。
特に選手の給料は全体のどれだけの部分を占めているのでしょうか?
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スポーツビジネスに興味がある方、ビジネスに興味がある方、Jリーグファンにぜひ読んでいただきたいブログです。
最初に概論をお話しした後に、今回も鹿島アントラーズ、Jリーグ平均、マンチェスターユナイテッドを取り上げて解説していきます。
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費用の構造
サッカーチームの費用は大きく3個にまとめられます。
- 人件費:選手やスタッフの給料など
- 販管費:チーム広告にかかる費用や 減価償却費(固定資産や選手の権利)など
- その他費用:アカデミーの運営費、試合・物販関連費など
この3つがサッカーチームのメインの費用となります。

ここで、販管費という難しい言葉が出てきました。
販管費ってなんやねん?!ですよね。
販管費とは、「販売費および一般管理費」と呼ばれるもので、広告費や減価償却費を指します。
次に減価償却費とさらに聞きなれない言葉が出てきました。
減価償却費とは、「企業が長期間にわたって利用する資産を購入した場合,その購入価額をいったん資産として計上した後,当該金額を資産の耐用年数にわたって規則的に費用として配分される金額」です。
何やねん!?って感じで、いまいちピンときませんね。
柔らかく言えば、ビルのような金額大きい買い物をして、それを1年の費用としてカウントしたら、その1年がすごく業績が悪く見えてしまうので、分割で費用としてカウントしよう。というものです。
サッカーで例えれば、例えば、マンチェスターユナイテッドがネイマール選手を獲得したことを想定しましょう。
ネイマール選手を300憶円で獲得してそのお金がすべてその年の費用だとすると、売上世界第3位のマンチェスターユナイテッドでさえ、営業利益は57億円(2018年度)ですので、一気に赤字転落です。
ですから、このネイマール選手の獲得費用を規則的に費用としてカウントすることで、大赤字にならないというわけです。
減価償却については、後日ブログで詳しくご説明したいと思います。
鹿島アントラーズ、Jリーグ平均の費用比較(2018年度)
それでは各チームとリーグの費用を解説します。
まず、鹿島とJリーグ平均で、絶対値で費用を比較してみましょう。

全体的に鹿島のほうが大きく見えます。鹿島のほうが平均より多くお金を使っていることがわかります。
やはりJの中ではビッククラブ。選手の給料やそれを支えるスタッフ。その他運営費は平均より大きいようです。
それでは 全費用における各費用項目の割合 でみてみましょう。

両者とも、人件費が50%を占めています。
やはり、選手やスタッフの方の給料は、サッカークラブの費用構成の中でとても大きな割合を占めることがわかります。
さらに驚くほど両者の割合はよく似ています。鹿島は平均的なJリーグの費用構造を持っているといえるでしょう。
一方で、悪く言えばみんなと一緒だと言えます。どこかでリスクを負ってチャレンジしている姿はこのグラフからは読み取れません。
鹿島アントラーズ、Jリーグ平均、マンチェスターユナイテッドの費用比較(2018年度)
次に、マンチェスターユナイテッドを含めて、比べてみたいと思います。 (1£=130円で計算)
まず費用の絶対値で比べると下記のようになります。

いつものJリーグチームが小さすぎるパターンですね。
費用の桁も、ヨーロッパのクラブチームはけた違いに大きいということがわかります。
それでは全費用における各費用項目の割合で比べてみます。

形はよく似ており、3者とも人件費が50%程度です。
Jチームの販管費とマンチェスターユナイテッドの減価償却費が入れ替わっているように見えます。
ここで、少しご注意いただきたいのは、Jリーグに各クラブが報告する項目とマンチェスターユナイテッドがNY株式市場に報告を求められている項目は、完全に同じ項目ではありません。日本とアメリカでは会計基準も異なりますし、そもそもJリーグのチームは上場していないので日本の上場企業と同じように決算報告をする義務はありません。
そのため両者の会計仕分け項目が完全に一致しているとは限りません。
一方、仮にJリーグチームの販管費がほとんど減価償却費だとすると、Jリーグ平均と鹿島アントラーズはともに、マンチェスターユナイテッドと非常によく似た費用構造をしていると言えます。
Jリーグチームの販管費がほとんど減価償却費である可能性は、小さくないと私は思っています。
以上より、基本的なサッカーチームの費用構造は、どこのクラブも似ているといえる可能性が高いです。
まとめ
今回はサッカーチームの費用を解説しました。
サッカーチームの費用は大きく3個にまとめられます。
- 人件費:選手やスタッフの給料など
- 販管費:減価償却費(固定資産や選手の権利)やチーム広告にかかる費用など
- その他費用:アカデミーの運営費、試合・物販関連費など
さらに、鹿島アントラーズ、Jリーグ平均、マンチェスターユナイテッドの3つの中では、費用構成に大きな違いは見られず、人件費が50%前後を占めている。
マンチェスターユナイテッドの経営戦略と経営状態を分析したブログはこちら↓
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