新型コロナウイルスがJリーグチームの経営に与える影響

2020年10月24日Jリーグ,スポーツビジネス

今回は新型コロナウィルスがJ1リーグに所属するサッカーチームの経営に、どれだけインパクトを与えるのか、損益を予想、分析してみました。
新型コロナウイルスは、スポーツチームのチーム経営にどれほどの影響があるのでしょうか?

具体例を出した方が分かりやすいので2018年比で、横浜FM、札幌を例に挙げてみていきたいと思いますが、全チーム同じような状況に陥ることが考えられます。
下記の見解はあくまで、私の予想です。

結論を言えば、コロナウイルスが与える影響はめちゃくちゃ大きいです。

コロナの影響で選手の給料減額について、必要性を分析したブログがこちら↓

2019年シーズンまでのJリーグチームの経営状態について詳しく知りたい方はこちら↓

2018年度通常の収益、費用、利益

まず、通常時の経営状態をご説明したいと思います。

経営の成績をきめるのは、「利益」が一つの大きな要素であることは皆さんもご存じだと思います。

「利益」は「利益=収益―費用」です。

では、2018年度の横浜と札幌の収益、費用、利益の実績を見てみましょう。

収益

サッカーチームの収益の源泉は、大きく4つあります。

  • 入場料収入:チケット代など
  • 広告収入:スポンサーやネーミングライセンスなど
  • グッズ販売収入:物販
  • 放映権収入:放映権

詳しくは、以前のブログで触れていますので、参考にしてください。

2018年の横浜FM、札幌の収入の額と、それぞれの項目は以下の通りです。

横浜FM

  • 入場料収入 11億円
  • 広告収入 20億円
  • グッズ販売収入 6億円
  • 放映権収入 4億円
  • その他 10億円

合計51億円

札幌

  • 入場料収入 6億円
  • 広告収入 13億円
  • グッズ販売収入 2億円
  • 放映権収入 4億円
  • その他5億円

合計30億円

どのチームも、広告収入が1番多く、二番目が入場料収入であることが分かります。

Jリーグチームはどのチームも大きくこのような収益構造をしています。

費用

次に費用の構造を見てみます。

サッカーチームの費用は大きく3個にまとめられます。

  • 人件費:選手やスタッフの給料など
  • 販管費:チーム広告にかかる費用や減価償却費(固定資産や選手の権利)など
  • その他費用:アカデミーの運営費、試合・物販関連費など

以前のブログで詳しく解説しているのでそちらもご覧ください。

2018年の横浜FM、札幌の収入の額と、それぞれの割合は以下の通り。

横浜FM

  • 人件費 23億円
  • 販管費 15億円
  • その他 13億円

合計51億円

札幌

  • 人件費 15億円
  • 販管費 8億円
  • その他 9億円

合計32億円

図にするとこんな感じ

二つとも、選手の給料である人件費が大きなウエイトを占めていることが分かります。

利益

「利益」は「利益=収益―費用」です。

右側に収益を書き左側に費用を書いた図にすると、利益は下の図のように表されます。

2018年度は、横浜FMは営業利益0円(億円以下は切り捨て)札幌は2億円の赤字です。

そもそも、コロナの影響なしに、通常に試合が開催されて、いつものように盛り上がって、たまにスタジアムも満員になって、J1リーグに所属してる強豪チームの利益が、通常状態で0円や赤字の状況です。

2018年度リーグ全体のチームの収益を分析したブログも参考までに読んでください。

コロナの影響が出ると、この状態から収入が減るので、赤字のチームが増えることが簡単に予想できます。多くのチームは赤字に陥ってしまいそうです。
以下、2つのシナリオを考えてみました。
通常シナリオより悪いシナリオです。

通常のシナリオ(6月に再開できたとする)

例えば、仮にJリーグが6月にリーグが再開できて、単純に3月~5月に計画されていた試合がなくなった仮定します。

Jリーグは全部で34節あり、3月~11月で開催が予定されています。少々強引ですが、試合が各月ごとに均等に開催されると仮定すると、3月~5月には全体の1/3の11試合行われることになます。

この試合が全部行われなかったと仮定しましょう。

ただでさえ、日程が過密だ、天皇杯決勝に行くチームはオフがないといわれていますので、日程を後ろに伸ばすことは少し考えにくいです。
そのため、11試合をすべて中止にするということは、起こりうる措置です。
さらに、オリンピックが来年に延期されましたので、来年も開幕を少し前倒しにしたいと考えると、消化できなかった試合は中止という措置は、当然あり得ると考えられます。

簡単のため、すべての収入が1/3減ってしまったとするとどうでしょうか?

収入は、入場料収入、広告収入、グッズ販売収入、放映権収入で構成されていますので、すべて試合数の影響を受けます。すべてがが1/3減ってしまい2/3になるということは十分にあり得ます。

横浜の収益は34億円 札幌は20億円です

すると、利益は下の図のようになります。

結果として、利益は横浜17億円の赤字、札幌12億円の赤字になってしまいます。
2018年度、最も大きな赤字額であったチームはC大阪の3億円赤字でした。最初にも触れたとおり横浜は利益0、札幌は2億円の赤字でしたね。
この額の大きさからも、コロナの影響がいかに大きいかということが分かります。

より悪いシナリオ(広告収入がより減る)

もっと悪いシナリオは、通常のシナリオより広告収入が減ることが考えられます

最初の収入の項目で確認した通り、広告収入はJ1サッカーチームの収益の中で最も大きな割合を占めるものでした。 広告収入は、企業からいただくスポンサー料が大きな割合を占めています。例えば、横浜FMは日産からスポンサー料をもらっています。

考えてみてください、日産にしてみたら、コロナの影響で景気が悪くなり、車が売れなくなったらどうでしょう。日産自体の収益の改善をしなければなりません。日産の従業員をくびにするわけにもいきませんし、工場を止めるわけにもいきません。
すると、最初にカットされるのが、「広告費・スポンサー料」なのですCMをなくしたり、スポンサー料をカットしなければなりません。

日産のような、大きなスポンサーは複数年契約を結んでいたり、シーズンが始まる前に契約を結んでいることもありそうですが、シーズン中に契約が決まる広告費も中にはたくさんあるはずです。サッカーチームからすると、企業からのスポンサー契約が全く契約できないとなると、大変です。

例えば、広告収入が1/3減って2/3になるではなく、当初予想の1/2しか得られなかったとするとどうなるでしょうか?

利益予想の結果は下の図のようになります。

横浜21億円赤字 札幌15臆円赤字

とんでもない金額の赤字となります。

ここまでで、新型コロナの影響は単純に試合数に影響するだけでなく、元も大きな収益源である広告料にも大きな影響がありそうだということがご理解いただけたと思います。

これらを踏まえると、イタリアやスペインで行われている「選手の給料を減額すること」は、いたしかたないことなのかなと理解できます。
費用の中で最も大きいものは、選手の給料に当たる人件費ですからね。
日本でも給料カットの話は、出てくると思われます。

またJリーグは今季、昨季までJ1リーグ優勝チームに15億円を支給するとしていたDAZN分配金を、その分配額や方法の見直しを行うことを決定しました。
J1チームでさえこのような影響が想定されますので、J2、J3のチームは火の車だと思います。救済措置がないと厳しいところも多いでしょう。
Jリーグの誠実な判断だと思います。

またJリーグは、クラブライセンスの「財務基準」の一つである3期連続の赤字や債務超過については例外を設ける方針で話が進められているようです。

多くのチームで赤字が避けられないのは、Jリーグ関係者の総意であることが、このことからもわかります。

まとめ

新型コロナの影響はとてつもなく大きい

これらの数字を見ると、Jリーグが再開を急いでいる理由も、よく理解できます。

ですが、人の命には代えられません。

早く、安全にリーグが再開できることを祈っています。

2019年シーズンまでのJリーグチームの経営状態について詳しく知りたい方はこちら↓

がみ
国立大工学研究科➡国内大手企業(社員5,000人の中から、選抜制海外駐在員に抜擢される)➡2年制国内フルタイムMBA(スペインIE business schoolに半年間交換留学)➡フリーランス
サッカー歴25年
欧米サッカー現地観戦試合数30試合以上
元社会人関東1部サッカーリーグ所属、元Jリーグチームインターン、元甲子園売り子
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