新型コロナウイルスとスポーツ選手給料の減額 減額は本当に必要か?

2020年7月4日スポーツビジネス

今回は新型コロナウィルスサッカー選手給料に与える影響を分析しました。
新型コロナウィルスの影響を受けたスポーツチームにとっての、選手の給料の減額の必要性を分析しています。
というのも最近、ヨーロッパの各リーグで、サッカー選手の減俸、削減が報道されています。
クリスティアーノロナウド選手のユベントスでの給料は37億円といわれていますが、30%強に当たる12億円の減俸に同意したと報じられています。
コロナウイルスの影響は、どれほど深刻なものなのでしょうか?

ユベントスVSアトレティコ

年俸600万円のサラリーマンが「在宅勤務になったから年俸400万円にするで」と突然会社から告げられたら、たまったものではないと思います。

それほどにも深刻な状況なのでしょうか?
これらの減俸、減給は必要な措置なのでしょうか?
サッカーチームの費用中で、選手の給料はどの程度の割合を占めているものなのでしょうか?

今回はセリエAのチームであるユベントスの収益構造を例にとり、必要性を検討していきたいと思います。

スポーツチームやビジネスに興味がある方にお勧めのブログとなっています。

ちなみに、セリエAでは、第26節でリーグが中止され、4月4日時点では5月3日の開催再開が検討されていますが、先行きは不透明です。 さらには、ユベントスは監督、選手全体で108億円の減俸を達成できる見込みだそうです。

結論から言えば、減給は避けられないでしょう。

ちなみにコロナの影響を分析したブログは↓

2018-2019シーズンにおけるユベントスの売上、費用、利益

会社の成績をきめるのは、「利益」が一つ大きな要因であることは皆さんもご存じだと思います。

「利益」は「利益=売上―費用」であらわされます。
まず、2018-2019シーズンのユベントスの売上、費用、利益の実績を見てみましょう。
(1€=120円で換算しています)

売上

  • 入場料収入 85億円
  • 広告収入 131億円
  • グッズ販売収入 53億円
  • 放映権収入 247億円
  • 選手登録権 188億円
  • その他41億円

合計745億円

ちなみに売上項目の内訳については、以前のブログで触れていますので、参考にしてください。

ユベントスの売上を図示するとこのようになります。

ユベントスは放映権収入が最も大きな収益を占めており、選手登録権が2つ目に大きな収益を占めています。

ここで、聞きなれない選手登録費という言葉が出てきました。選手登録費とは、移籍していった選手の移籍金を表しています。この年ユベントスは、188億円の移籍金を手にしています。
ちなみにJリーグチームは広告収入が1番多く、二番目が入場料収入ですので、大きく収益構造が異なることもわかりますね。
日本の場合、放映権は最近DAZNの影響で増えたものの、ヨーロッパに比較すると遠く及びません
さらに日本の場合、選手登録費も、ヨーロッパより移籍金が小さいため、ユベントスのように大きな項目として取り上げられません。

ヨーロッパのサッカーチームとJリーグのチームは、事業規模も大きく異なります。

事業規模の違いについては、こちらのブログも参考にしてください。

費用

次に費用の構造を見てみます。

  • 人件費 361億円
  • 販管費 214億円
  • その他 188億円

合計763億円

図にするとこのように表されます。

ユベントスの場合、人件費(選手やスタッフの給料)が費用の47%を占めています。出費の半分は人件費なのですね。

以前のブログで詳しく費用の内訳について解説しているのでそちらもご覧ください。

また、売上のところで、選手を売却した場合の移籍金は売り上げに含まれると説明しました。
それなら、選手を獲得した移籍金は費用じゃないの?と思われる方も多いかと思います。
しかし、移籍金そのものは会計上、費用として計上されません。無形固定資産として扱われ、減価償却費が費用として計上されます。少し難しいので、今回はいったん飛ばして、またの機会にご説明したいと思います。

利益

「利益」は「利益=収益―費用」なので、図にすると下のようになります。
左側の赤い方が、費用右側の青い方が、売上を表しています。
赤字で書いている、費用と売上の差分が利益です。

2018-2019シーズンは、ユベントスは18億円の営業赤字です。

そもそも、通常に試合が開催されて、いつものように盛り上がって、セリエA5連覇中のチームの営業利益が、18億円の赤字です
コロナの影響が出て中止になる試合が増えると、この状態から収入が減るので、チームが赤字になることは簡単に予想できます。

このまま試合が再開できないと…

仮に、このまま試合が再開されなかった時のことを、2018-2019年シーズンに置き換えて考えてみましょう。

セリエAは38節予定されており第27節から試合が中断されています。このまま再開されなければ、合計12試合が開催されないこととなり、全日程の30%が開催されないこととなります。

開催中止が影響の出る項目は、入場収入、放映権収入、グッズ収入、広告収入として、それらの項目からの収入が30%なくなるとすればどうでしょうか?
(放映権については、契約で定められているため、30%収入がなくなるとは断定できないが、今回は簡単のため、30%収入が減少すると仮定した。)

下の図のようになります。

結果として、売上は590億円となり、営業利益173億円の赤字となります。

とんでもない額です。
Jリーグで最も売り上げがあるヴィッセル神戸の売り上げは100億円程度ですので、Jリーグチームの一年の売り上げの約2倍に匹敵します。

困ったユベントスは当然選手の給料を削減したいでしょう。
なぜなら、費用の項目でご覧いただいたように、費用の最も大きな項目が、人件費で約50%を占めているからです。

やはり、選手の給料カットは避けられない状況でしょう。
ちなみに、報道の通り、ユベントスは全体で100億円程度の削減で合意しているとしても、まだまだ削減額は足りません。
100億円人件費を削減したときの、ユベントスの主益予想を図示すると下のようになります。

上の図のように100億円削減できたとしても、それでもまだ70億円の赤字です。

ユベントスとしては、他の項目での費用削減を迫られます。
サッカーチームにとって苦しい日々は続きそうです。

まとめ

新型コロナの影響による選手の給料カットは避けられないだろう。
Jリーグでも、夏以降は給与削減の話が出てくると思われます。
早くみんながサッカー観戦を楽しめる状況に戻ることを期待しています。

がみ
国立大工学研究科➡国内大手企業(全社5,000人の中から、選抜制海外駐在員に抜擢される)➡2年制国内フルタイムMBA(スペインIE business schoolに半年間交換留学)➡フリーランス
サッカー歴25年
欧米サッカー現地観戦試合数30試合以上
元社会人関東1部サッカーリーグ所属、元Jリーグチームインターン、元甲子園売り子
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