コロナウイルスの影響でサッカーの交代枠が3枠から5枠になるとどうなるか

今回は、コロナウイルスの影響で過密日程になる懸念から、国際サッカー連盟(FIFA)がサッカーの1試合の交代枠を3枠から5枠に増やす提案をした件について、私見を述べたいと思います。
私は、サッカー歴25年、元サッカー社会人サッカー関東リーグチーム所属のMBAホルダーです。
この提案の、スポーツに与える影響と、商業的な影響を考察したいと思います。
スポーツとしてのサッカーに対して、選手の状態やチームの状態にどんな影響があるのでしょうか?
サッカーの試合自体はどうなるのでしょうか?大きな違いはあるのでしょうか?
商業的には、良い施策となるのでしょうか?
私はスポーツ的には、交代枠を5人に増やすことはケガの予防につながる一方で、交代枠が5人のサッカーは従来の3枠のサッカーとは違うスポーツになると考えています。
違うスポーツとして、よりエンターテイメントにあふれたゲームになりますので、個人的にはこの施策に賛成です。
交代枠の増枠が商業に与える影響は小さいと考えています。
コロナがサッカーチーム経営に与える影響を分析したものがこちら
コロナに選手給料減給の必要性について書いたブログがこちら
交代枠増枠提案の概要
これは2020年4月27日にロイター通信が発信したものです。
現在新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界各地でサッカーのリーグ戦ないしはカップ戦が中断している状況にあります。
過密日程の影響で、選手のケガが懸念されるため、2021年までの一時的な措置として、本措置が提案された模様です。
また、各国のリーグが導入するかどうかは、各国のリーグが判断できる模様です。
スポーツに与える影響
過密日程の選手への影響
増枠提案の中で、過密日程が選手のケガにつながるリスクが叫ばれていますが、ルールを変えるまでの、リスク増加が見込まれるのでしょうか?
実は、ケガのリスクは大きく高まることが証明されています。
理由は下の2点です
過密日程で、プレミアリーグでケガをした選手の例
実は昨年のプレミアリーグでの出来事なのですが、2019年の年末から2020年の年始にかけての過密日程で、有名選手がことごとくケガに見舞われていました。
毎年、欧州リーグは年末年始は休みになるのですが、プレミアリーグは普段より過密日程で試合を消化します。
商業的価値を考えるプレミアリーグらしい施策です。
10日で4試合をこなすハードスケジュールです。
(吉田麻也選手は昨年まで7年間、年末年始を日本で過ごしたことはないはずです。)
一方、この時期に負傷する選手は毎年多く、昨年は特に多かったです。
なんと、過密日程の最終日となる第21節で、プレー中に12選手が故障しました。
代表的な選手では、トットナムのエース、ハリー・ケイン選手も試合中に足を痛めて途中交代しました。
また、ある研究では、週に2試合をこなした選手はケガのリスクが6倍以上に高まるとの研究もあります。
過密日程で、試合をこなすとケガのリスクは当然のように増えます。
つまり、プレミアリーグでは、商業価値と選手のケガリスクのバランスを究極までバランスさせているリーグだと言えます。
世界一タフなリーグといわれる所以はここにあります。

毎年ACLに出場するチームは選手のコンディションが低下し、チームパフォーマンスが著しく低下する
Jリーグに目を向けてみましょう
毎年Jリーグでは、ACLに出場している間、Jリーグチームの成績はすこぶる不調です。
ACLとは、アジアチャンピオンズリーグのことで、アジアの各リーグで成績上位だったチームが、アジア内でNO.1を決める大会です。
毎年開催されており、Jリーグからはリーグ戦の上位3チームと天皇杯の優勝チームの合計4チームが出場します。昨季、天皇杯を優勝したヴィッセル神戸も2020年度はACLに出場しています。
つまり、ACLに出場している限り、他のチームとは多い試合を過密日程でこなさなければなりません。
ACLに出場するチームはその期間中、毎年、すこぶるJリーグの成績が悪いのです。
昨年度の成績上位4チームであるにもかかわらずです。
例えば2019年シーズンでは、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、サンフレッチェ広島、川崎フロンターレが出場しました。
ACLのグループステージ最終日は2019年5月22日です。
その時点での、Jリーグでの成績は
川崎 4位
鹿島 5位
広島 8位
浦和 9位
です。
前年度の成績上位4チームが、すべて4位以下の成績となっています。
さらに、昨年度は浦和レッズがACL決勝までコマを勧めましたが、昨年度Jリーグの最終順位は14位でした。
このことからも、過密日程がチームのパフォーマンスを悪化させる原因であることが分かります。
交代枠増加のスポーツとしての試合に与える影響
交代枠が3枠から5枠に増加することの影響は、試合中に大きくに現れると考えられます。
特にエンターテイメント性に影響が出て、エンターテイメント性は上がります。
これまで、我々の身近で交代枠5枠で行われている大会は、サッカー日本代表の国際親善試合です。
例えば、国内で開催されるキリンカップがこれに当たります。
キリンカップは、日本代表の舞台で多くの選手を試すために、試合中の交代枠が5枠で設定されています。
サッカーは90分間走り続ける競技ですから、後半20分くらいになって入ってくる選手とそれまで65分間走り続けている選手では圧倒的に体のキレが全然違います。
開始から出場している選手と、途中から出場している選手の元気の良さがどれくらい違うかというと、真水とコーラのシュワシュワ感くらい違います。
65分間走り続けている選手は、サッカー選手とはいえ相当疲れています。真水です。
そのため通常、交代枠が3枠の試合ですと、中盤の選手2人、疲れやすい選手1人、のように、運動量が多い選手が交代選手に選ばれる傾向にあります。
切れが落ちてきた選手を交代させないと、ミスから点につながってしまう恐れがあるからです。
監督は、毎試合フィールドプレーヤー10人のうちの3人を交代させて7人を残します。
3人めちゃくちゃフレッシュな選手を入れて、7人疲れている選手を残す計算をしているのです。
試合終了間際は、この7人の交代しなかった選手はへとへとなので、監督は交代で出場しているシュワシュワ3人のコーラが活躍してくれることを祈っています。
ところが、どうでしょう。
5人交代できるようになると、フレッシュ対ヘトヘトが5対5になります。
めちゃくちゃ動ける選手が2に増えて、ヘトヘトな選手が2人減ります。
2チーム合わせると
もともと真水14:コーラ6だった状態から、真水10:コーラ10になるわけです。
そのため、ゲーム全体のシュワシュワ感が圧倒的に上がります。
さらに、交代選手の方が点を取る確率が高くなるので、点がたくさん入る傾向があります。
私が、国際親善試合で記憶に残っている試合は、2009年の日本VSガーナ戦です。
4-3で日本が勝った試合です。
この試合はガーナ代表のエース、ギャン選手に2点取られ、0-2の状態で後半を迎えました。
スタメン中村憲剛選手が1点を返したのですが、すぐにガーナ代表の交代で入ってきた選手に1点を奪われ3-1になりました。
その後、日本は玉田選手、稲本選手、本田選手を交代で投入します。
その結果、日本の攻撃が活性化し、交代出場の玉田選手のゴール。
スタメン出場の体力モンスター岡崎選手のゴールの後、交代出場の稲本選手のゴールで3点を奪い、4-3で日本が勝利しました。
シュワシュワ感満載でした。
4-3というスコアは、交代枠3人のゲームではあまり見られない珍しいスコアです。
さらに、ガーナも日本も交代選手がどんどん点数を取っています。
このことからも、スタメンの選手と交代出場の選手のシュワシュワ感(元気の良さ)が真水とコーラくらい違うことがお判りいただけたと思います。
さらに、交代選手が多ければ、シュワシュワ感の多いゲームになり、得点数の多さも普段のゲームより多くなることが、お判りいただけたと思います。
商業的な影響
私は、商業的な影響は小さいと考えています。
それは以下2つの視点からです。
交代枠が増えても放映権に与える影響はほとんどない
交代枠が増えて、エキサイティングな試合が増えたとしても、放映権に与える影響はほとんどないと考えられます。
放映権は、シーズン前に金額が決定されており、シーズン中に増えることはないからです。
たとえ、点数がたくさん入る試合になったとしても、サッカーの興味ない人からしてみればどうでもいい話です。
放映権は、サッカーを見る人の需要に対して金額が決定されているので、サッカーを見ている人にとって試合が以前より面白くなったとしても、サッカーに興味がない人が見るようになるとは思えません。
そのため、放送する側にとって商業的な価値は小さいからです。
しかも、Jリーグで言えばDAZNと10年の契約を結んでいますので、放映権が増額することはありません。
グッズの売り上げが伸びたとしてもその影響は小さい
例えば、若手がよりチャンスを得るようになって、今シーズンは若手のグッズが多く売れたとします。
それ自体はうれしいことなのですが、サッカーチームの収益においてグッズ売上が占める割合は、小さいので、経営に大きく影響を与えません。
そのため、影響は小さいと考えられます。
まとめ
スポーツとしての影響
交代枠を5人に増やすことはケガの予防につながる
過密日程は選手に影響を与え、ケガのリスクが上がる
過密日程で、プレミアリーグでケガをした選手の例
ACLに出場するチームは選手のコンディションが低下し、チームパフォーマンスが著しく低下する
交代枠が5人のサッカーは従来の3枠のサッカーとは違うスポーツになる
国際親善試合2009年日本VSガーナのシュワシュワ感
商業としての影響
小さい